BOOKS HIRO通信 第158号
(1)みなさまこんにちは
RIVE GAUCHEの「パリの刺繍学校 」さんの棚から棚主さんのご著書『パリの刺繍学校』を購入して読みました。
棚主さんがご趣味の刺繍の奥義を極めるため、パリの刺繍学校「エコール・ルサージュ」ヘ数回にわけて留学された時の記録を、パリの生活や見物の実体験を加えて記述されています。
パリの刺繍学校で学ぶという貴重な経験を描く部分は刺繍の専門家として筆も冴えてますし、刺繍の技術とその習得過程を中心に書くことで、単なるパリ旅行記を数段越えるものになっています。刺繍学校の中の描写を読むと素人の私でもワクワクするのですが、パリという街の記述もこの刺繍のように詳しくかつヴィヴィッドで見事です。道中の出来事を総花的に並べることになりやすい旅行記ですが、芸術家の目で見て効果のある部分にハイライトをあてて、読者の目に見えるように事物を描くという技が著者にはあります。
著者は2010年と2011年に刺繍学校にいらしたようです。私は同じころ(2009年)の秋に初めてのパリ観光旅行に行き、味を占めて、2011年の春もパリに滞在、東北大震災と津波の発生直後にあわてて帰国しようとしたときのことを思い出します。オペラ座の裏通りのホテルのオーナーが心配してくれて、もし帰れなかったらここに戻ってこい部屋は開けておくと言ってくれたり、近所の行きつけの喫茶店で、店員が慰めてくれたりして、普段はそっけない感じのパリの人々の意外な優しさにホロリとしました。(結局半日以上空港で待機して、エールフランスの成田直行第一便でなんとか帰国しました。)
このように、一見クールなパリの人々(刺繍学校の先生・学友・アパルトマンの隣人・カフェの従業員)が時折見せる意外な優しさの記述は『パリの刺繍学校』のなかにも、随所に見られます。私のような観光客でなく、刺繍という技術の習得に行った著者に対しては、アルティザンを重んじるパリの人々はもっと親しみをもったのだろうと推測します。皆に話しかける著者の性格も助けになったのでしょう。
刺繍好きの方はもちろん、そうでない方にも一味違うパリ旅行記としておすすめできる本です。(RIVE GAUCHEとPASSAGEbisにまだ在庫があります。いま棚主ページを見たら新刊も出されたようです。)
(2)現在の私の棚主ページです
SOLIDA
RIVE GAUCHE
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また来週。
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