BOOKS HIRO 通信 第146号

『ポール・ヴァレリーの遺言 わたしたちはどんな時代を生きているのか?』(保苅瑞穂・集英社)を読み終えました
hiro 2025.05.02
誰でも

(1)みなさまこんばんは

保苅瑞穂が2021年にパリで逝去する直前まで、「スバル」に連載していた随筆をまとめた本です。題名通りポール・ヴァレリーの著作を読者向けに簡潔明瞭に読み解いてくれています。いままで、高名なでも身近には感じられない人だったポール・ヴァレリーを、現代に蘇らせ、世の安易な風潮に警鐘を鳴らしてくれると感じました。

たとえば164ページからの引用:

ただ、そんなふうに毎日を機械と時間と騒音に攻め立てられて暮らしていれば、いつか人間は一個の生き物として、その非人間的な状況に耐えられなくなる日がやってくるだろう。そんなとき人間は、内面の奥深くにある静かさに浸ることによって自分を取り戻す。その静かさを、ヴァレリーは、われわれの「存在の深みにある本質的な静かさ」と言った。人間は、その静かな安らぎの中で自分を取り戻して、疲れた精神に再び生気を吹き込むだろう。それは人間が生き物として、本能的に見せる自己保存の行為である。しかし、仮にこの内面の静かさを失うようなことになれば、人間は、精神的にも肉体的にも正常でありつづける事は次第にむずかしくなるだろう

を読むと、思い立って毎朝6時に起き、Twitter(今のX)閲覧とかインターネット検索などせずに、思索にふけることを習慣化したくなります。これはヴァレリーが生涯を通じて続けたことで、その明晰な思索の一端をメモしたものが『カイエ』として残されたということです。私は今朝からこれを始めました。以前やっていた毎日のブログを名前を「カイエ」として復活させようと思っています。ただし公開はせずに。あとで、自分の日々の思索の記録を読み直せるように。

老境に入って、パリに行った保苅瑞穂はきっと「静かな」孤独な環境で、自分と世界の来し方行く末に思いを巡らしたことでしょう。その一端がこの本に結実したと思われます。

保苅瑞穂の他の本と同様に、全ページの文章がわかりやすく、まるで水が流れ込むように私の頭に入ってきます。達意の筆とはこのことなのか、相性がとてつもなく良いのか、読んでいてストレスがまったくかかりません。読み終えるのが惜しくなるような本でした。心乱れてしまいなんとか静かに思いを巡らせたいときに、この本をまた手に取ることでしょう。

ポール・ヴァレリーの『カイエ』はなんとか手元に揃えたいと思っています。『レオナルド・ダ・ヴィンチの方法』はRIVE GAUCHEの私の棚から返品して持ち帰ってきました。

(2)現在の私の棚主ページです

SOLIDA

RIVE GAUCHE

***

また来週。

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