BOOKS HIRO 通信 第152号
(1)みなさまこんにちは
『最強の女 ニーチェ、サン=テグジュペリ、ダリ⋯天才たちを虜にした5人の女神』(鹿島茂著 2017年 祥伝社刊)をRIVE GAUCHEの岸リューリさんの本棚より購入しました。「最強の女」5人のうち最初のルイーズ・ド・ヴィルモランの章を一気読みしました。あのサン=テグジュペリと婚約しその後婚約破棄するのですからすごいです。他にもマルローやコクトーたちといろいろある。大したものです。感心してないで、その他の4人に関しても早く読めばいのですが、読書の楽しみである道草をしています。道草のきっかけはルイーズの楚々とした顔を描いた挿画です。
著者鹿島茂の本を本格的に読んだのは意外に遅くて、2012年末に読んだ『パリの異邦人』。語学留学中の息子が住んでいたマレ地区のアパートで、夜中に読むものが欲しくなって2011年刊のKindle版で読みました。この本を今回思い出したのは、深層心理における記憶のせいらしいです。今回『パリの異邦人』の挿画と見くらべるとタッチが『最強の女』とまったく同じ。すばらしい挿画を描かれたのがどちらも岸リューリさんだったからというわけです。
『パリの異邦人』の最初の章の題材はリルケ(の『マルテの手記』)です。『マルテの手記』をはじめて読んだのは学生のとき(だから1972年頃)です。それから50年以上経っているが、まだ魅力は絶えないのです。つまり、読み返しています。『パリの異邦人』のなかの記述が理解の役に立つ。当時(1904年ごろのパリ)金持ちは自宅で医師の往診を受け、病院にいくのは重症の貧乏な人だけだったこと。それでマルテは妊婦が陸軍病院に向かっていくのを見て特別な感慨を持つ⋯⋯。
『パリの異邦人』の2章はヘミングウェイ(の『移動祝祭日』)について。これをマレ地区のアパートの夜に読んで、翌日、近所だったシェイクスピア書店に飛んでいって、英語版の『A Moveable Feast The Restored Edition』(このEditionが出るにも歴史があるようです)を購入しました。今も手元にあって、読むたびに、「青春時代にパリで暮らした人は生涯パリの記憶を持ち歩くことができる」というヘミングウェイの言葉は本当だとしみじみ思っています。これは息子も同じらしく、数年前にが新婚旅行に行って『Shakespeare and Company, Paris: A History of the Rag & Bone Shop of the Heart 』(2016年 シェイクスピア書店刊)を買って来てくれました。分厚い本ですが時々拾い読みしています。活字が大きいので読みやすいです。なお、ヘミングウェイがシルヴィアビーチの「先代」シェイクスピア書店をドイツ軍の支配から解放したところは、「劇画調」になってます。この本Amazonさんで入手できますが円安のせいでちょっと高いです。
多くの本たちの内容はそれぞれ複雑なトポロジーで繋がりあっている気がします。そして、本の中の時空と著者・自分・家族の時空がそれ以上に複雑に絡みあっています。そのことに気づくのは読書の最高の楽しみ・醍醐味です。
本はタイムマシンであり、読書はタイムマシンに乗って過去・現在・未来へ宇宙を縦横に行き来することに他なりません。この素晴らしい世界への身近な入口のひとつが共同書店なのです。
(2)現在の私の棚主ページです
SOLIDA
RIVE GAUCHE
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また来週。
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