BOOKS HIRO通信 183号
(1)みなさまこんにちは
RIVE GAUCHEの書棚「Iter Vitae(人生は旅)」、棚主さんの著書『カナダ・ケベックを知る その知られざる素顔』を読んだ。
最近のPASSAGE各店の棚の傾向として、棚主さんが書いたり、作ったりした書籍やZINEが増えてきたようだ。この本も外交官であられる森本真樹さんがそのカナダ・ケベックでの首席領事としての経験を生かして書かれた本。
超大国米国と隣接しながら独自路線を歩むカナダのことは何も知らなかった。どんな本かなと思って購入した。領事としての数年間にカナダ・ケベックのことを調査され、実体験のなかから公刊できることをお書きになった本と思う。何も知らない私にとっても、詳しく書かれた全ページがおもしろかった。また、米国の横暴な関税政策にカナダが毅然として対応しているのに感心していたが、その歴史的背景も少し理解できたような気がする。今後はニュースを見聞きする際の、参考になるだろう。
この本を読んで多くのことを学んだが、下のいくつかの引用部分からは、感銘を覚えた。
1964年に州政府に教育省が設置されると、教育の現場に宗教(この場合、カトリック)関係者ではないものも教師として採用されるようになった。(中略)そして2019年、政教分離に関するケベック州法案第21号が可決された。これは、公立の小中学校の教師や校長などの権威ある地位にある人が、宗教的象徴物を着用することを禁止することを明文化したものだった。このように、ケベックの人々は、静かな革命の中で宗教からの解放に成功したと言えるだろう。
メティスとは、ヨーロッパ人と先住民の混血を意味する。メティスの最初のコミュニティーは、18世紀、毛皮取引のために5大湖周辺に入植したフランス人商人たち(この場合、大抵は男性)が、地元の先住民(女性)と結婚したり、養子縁組をしたりしたことで誕生したと言われている。(中略)1982年のカナダ憲法採択に向けては、既に存在した複数のメティス団体が、自分たちを、ファーストネーションズ(インディアン)、イヌイットとともに、れっきとした先住民として、憲法に明記されるよう働きかけを行い、成功した。(中略)メティスとカナダ政府との間で、最初に自治協定が結ばれたのは、ごく最近の2019年6月で、「メティス・オタワ協定」と呼ばれている。数十年にも及ぶ働きかけの結果であった。
1867年にカナダは大英帝国から自治を獲得して、事実上の独立を達成し、その翌1868年に日本では明治維新が起こる。お互いに新しい国家体制になってから20年後の1889年、日本政府はバンクーバーに日本領事館を解説。そして1903年に首都オタワに日本領事館を設置した。1928年に日本とカナダは正式な外交関係の樹立に合意し、オタワの領事館を公使館に格上げした。翌年の1929年にはカナダ政府が東京にカナダ公使館を開設。これは、カナダ政府が外国に設置した公館の中で、米国とフランスに住む3番目に古いものである。第2次大戦中は関係が悪化したが、戦後、両国関係は回復。1951年のサンフランシスコ講和条約締結後、両国の関係は完全に回復した。1956年には、カナダからのサポートも得て、日本は国際連合への加盟を実現した。
感銘というより、このような事実を全く知らなかった自分の不明を恥じたというべきかもしれない。これを読んだだけでもこの本を購入した意味がある。
もちろんこの一冊のみで、カナダ(・ケベック)がわかったわけではない。しかしこれからの国際ニュースなどを見聞きした場合に、カナダの国際政治上の動きが少しわかりやすくなるだろう。
著者のアフリカに関する著書も読んでみたい。また、将来自由な立場にたたれた場合にお書きになるであろう回想録的著作もできるなら読んでみたい。
そして、PASSAGEコミュニティでの顔見知りの方の作られた本は、乏しい財布の中身の許すかぎりはこまめに入手して読んでいこうと思う。PASSAGEは出会いの場だ。
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また来週。
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