BOOKS HIRO 通信 第149号

『ユーラシア横断1万5000キロ』(金子浩久著)を読み、昔読んだ『ロンドンー東京5万キロ』を思い出す
hiro 2025.05.24
誰でも

(1)みなさまこんにちは

PASSAGEの金子浩久書店からお迎えした『ユーラシア横断1万5000キロ―練馬ナンバーで目指した西の果て』を3日間・240キロ』を、通勤電車で「旅」しながら読みました。電車は単なる移動手段なのでなかで存分に本が読めます。しかし、自動車による旅こそ太古からの徒歩旅行の伝統を継ぐ本来の旅なのだとこの本は教えてくれます。

著者の首都圏のご自宅からポルトガルのロカ岬まで1万5千キロ、カルディナの中古車のハンドルを握って走って行くというその意気に感心させられました。途中のいろいろな困難を著者持ち前の陽気な積極性で解決していくのが痛快です。これをよむと私もハンドルを握って世界ドライブに出たくなりました。

昔赴任地の豊田市から郷里の青森県まで家族や飼い猫も連れて走った思い出も懐かしくよみがえりました。目的地と自分が現在住んでいるところがドライブにより地続きであることが実感できるのです。地球の上の自分の行動範囲が広がる感覚です。

著者の豪快なご性格があらわれながらも、一方で繊細かつ流麗であるという文章もこの本の大きな魅力です。自分も一緒に旅しているという感覚に襲われます。中古車のカルディナが丈夫なのにも感心しました。シベリアの悪路(というより道がない)を走りながらも、旅の継続を断念するような重大ななトラブルはありません。もちろん、ドライバーの手腕によるところが大きいことは言うまでもありません。

この本の冒頭に『ロンドンー東京5万キロ : 国産車ドライブ記』(辻豊, 土崎一 共著 1957年 朝日新聞社)のことが出てきます。小学生のころこの旅が世間の話題になり、小学生の私は親に頬んで買ってもらい読んだ記憶があります。感激しながら読んだ本は実家のもらい火による焼失により手もとにはありません。古本をさがしているがなかなか良い状態のものは見つかりません。仕方なく国会図書館DCで探して再読しました。

辻豊たちは、可能な限り色々な土地を回ろうと、南回りのルートをたどりました。このため、走行距離は5万キロ弱となったようです。トヨペット・クラウンの当時の新車だったのですが、イランの砂漠などで過酷なコースをたどったため、深刻な車のトラブルにみまわれます。細かい部品はもちろん現地では手に入らずに自分たちで工夫して修理し、重大な鉄製部品は村の鍜冶屋に直させ、現地日本系商社で使っている同型車の部品をわけてもらい、と大奮闘します。これを読んでいると50年間のモータリゼーションの変化にあらためて驚きます。

しかし、自動車ドライブの旅に対する情熱はかわりません。自分で動かすから自動車、それで旅に出るというロマンも共通しています。もっと自動車ドライブ旅行記がよみたくなりました。

『ユーラシア横断1万5000キロ―練馬ナンバーで目指した西の果て』はPASSAGEの金子浩久書店(棚主ページアドレスは下記)にまだ在庫があります。ときどき店にいらっしゃる著者にサインをいただくことも可能そうです。

(2)現在の私の棚主ページです

SOLIDA

RIVE GAUCHE

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また来週。

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