BOOKS HIRO通信 第111号

『街とその不確かな壁』で語られ、PASSAGEで実現しつつある読書の新世界
hiro 2024.08.31
誰でも

(1)みなさまこんばんは

先週末に読んだ、村上春樹さんの『街とその不確かな壁』の最後の一節がまだ心に残っています。642ページから引用します。

「少年が私のために、彼の内なる図書館をそっくり開放してくれたのだ。その高く長大な書棚には、古今東西のあらゆる種類の書物が見渡す限りに並べられていた。(中略)私は目ではなく、心を使ってそれらの本を読むことができたからだ。農業年鑑からホメロス、谷崎からイアン・フレミングに至るまで。書物というものが一冊も存在しないこの街にあって、形を持たない、したがって目には見えない本を、誰に咎められることもなく自由に読み続けられること、それは私にとって尽きせぬ喜びだった。」

PASSAGEの目指す世界も、このイメージに近いものがあると考えています。われわれ棚主は自分の書棚の本(の一部)を他の方々に開放します。『街とその不確かな壁』では、天才的な読書家の一人の少年が読んだ無数の本を、心のなかから開放し主人公に読ませていますが、われわれは有限数の本を開放しているにすぎません。ただし、多数の棚主が参加することにより、少年の読んだ本の数を凌駕することができるのです。そして、その多くの数の本に触れる人々すべてに、尽きせぬ喜びをもたらす点で、かわりがありません。

別の話ですが、『街とその不確かな壁』のあとがきで、村上春樹さんがホルヘ・ルイス・ボルヘスによるモチーフの書き換えの繰り返しに言及されています。このため、次の読書本は『百年の孤独』となりました。現在までに半分くらいまで読み進めました。意外に(といっては著者・訳者に失礼にあたりますが)読みやすい。ボルヘスの語る、登場人物たちが似たような生涯を繰り返す世界に、すぐに溶け込むことができました。

***

日曜日にPASSAGEの4号店RIVE GAUCHEに第一回の納品を済ませました。何を持っていったかは、(2)の棚主ページの二番目でご覧ください。RIVE GAUCHEは都会の真ん中とは思えない「高原感」あふれる素敵な場所にあります。一度行ってみることを皆様におすすめします。

(2)現在の私の棚主ページです

SOLIDA

RIVE GAUCHE

来週の私のバイトスタッフ勤務は月曜日と水曜日です。

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