BOOKS HIRO通信 第106号

パリの魔法に魅せられて―鹿島茂『パリの本屋さん』(中央公論新社)
hiro 2024.07.19
誰でも

(1)みなさまこんばんは

PASSAGE by ALLREVIEWSのプロデューサー、鹿島茂さんの新刊『パリの本屋さん』(中央公論新社)を手に取ったとき、まるでパリへの小旅行が始まったかのような高揚感を覚えました。PASSAGEの鹿島茂さんの書棚で入手したサイン入り本なので、そのワクワク感がさらに高まります。久しぶりのエッセイ集ですが、読みどころが相変わらず満載です。

冒頭のエッセイ「ああ、パリに着いたんだ!」では、著者がパリに到着した瞬間に感じる「とてつもなく大きな幸福感」の源を探ります。それは「無意識の縛りからの自由」の中に身を置き、「自分そのものを取り戻す」喜びだと鹿島さんは書いています。この感覚は他の都市でも味わえるかもしれませんが、パリには特別な魔力があるようです。読んでいると、私も思わずパリ行きの飛行機に飛び乗りたくなってしまいました。

本書の中核は、パリの様々な本屋を巡るエッセイです。中でも「シェイクスピア・エンド・カンパニー」についての記述は白眉といえるでしょう。シルヴィア・ビーチが創設した初代店の歴史的意義はもちろんのこと、現代の同名書店の魅力も見事に描き出しています。「英語で書かれたパリ体験ものはほとんど揃う」という特徴が、この書店を特別なものにしているそうです。さらに鹿島さんは、「英語のパリ体験本を手にしていると、それを手放した人の思いまで伝わ」る「不思議なノスタルジーに満ちた本屋」だと表現します。これを読むと、もうじき開店するPASSAGEの4号店RIVE GAUCHEも、フランスへの憧れや思い出がいっぱい詰まった素敵な場所になるのではないかと、大いに期待してしまいます。

「もっとも贅沢な旅」というエッセイは、まさに夢のような内容です。17・18世紀の英国貴族の子弟たちが行った「グランド・ツアー」の贅沢さには、思わず目を見張ってしまいます。家庭教師兼ガイド役に支払われた報酬が現在の価値で約1億円、ツアー全体の費用が数十億円というのですから、驚きを隠せません。読んでいると、「もし私にそんなお金があったら…」と、つい妄想してしまいました。鹿島さんを「家庭教師」に迎えてフランスを巡る贅沢なツアー、素敵じゃありませんか?

残念ながら、そんな贅沢な旅はすぐには叶いそうもありません。でも大丈夫。この『パリの本屋さん』があれば、安楽椅子に座ったままでパリの街を歩き、古書店をのぞき、カフェでエスプレッソを楽しむことができるのです。鹿島さんの軽妙洒脱な筆致に導かれ、読者は知的で魅力的なパリの旅を楽しむことができるでしょう。さあ、あなたも今すぐこの本を開いて、パリへの旅に出かけてみませんか?

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