BOOKS HIRO 通信 第144号

『輝ける闇』(開高健)を読みながら個人棚主の理想像を考える
hiro 2025.04.19
誰でも

(1)みなさまおはようございます

先週土曜日に青熊書店(大岡山店)の開店記念レセプションに参加しました。青熊書店の選書が素晴らしいのはPASSAGE店開設当時からですが、昨年の自由が丘店そのあとを継ぐ大岡山店の書店全体の雰囲気の良さにも感嘆します。本と読書を愛する店主ご夫妻の姿勢がにじみ出るのでしょう。自分もこのような素敵なお店を持ってみたいとも考えてしまいます。

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4月18日のある勉強会の題材として、最近読んだばかりの『輝ける闇』(開高健)を再読しました。勉強会では作品のなかの「名前のない感情」を指摘する課題が出ていたのです。「混沌」のなかで「名前のない感情」を如何に効果的に描写しているかが問題。

『輝ける闇』ではベトナム戦争の激戦中に従軍記者の主人公が、なすところなく弾幕のなかで伏せている時にみた、地面を這う蟻の本能的ないとなみの短い描写が、人間の無意味な戦闘行為を明確にするのだろうと、読みました。

なお、『輝ける闇』は

「開高 健 電子全集1 漂えど沈まず―闇三部作 Kindle版」で読むのがおすすめ(お買い得)です。電車の中でも大部の本を手軽に読めます。そして、これを読んだら必ず「開高 健 電子全集7 小説家の一生を決定づけたベトナム戦争 Kindle版」も読みたくなります。

今朝、片岡義男の『日本語の外へ』のなかの一節に、湾岸戦争においても自らのウェイ・オブ・ライフを頑なに守る一部のアメリカ白人への批判が書かれているを見つけたのですが、『輝ける闇』で描かれた米国軍人の頑なさ(あるいは救いようのない幼稚さ)はここから来ていそうだと思いました。昔のベトナム戦争・湾岸戦争で時代遅れになったことを、今のアメリカの為政者がMake America Great Againというスローガンのもとにで持ち出そうとしているところに、大きな危惧を感じます。

ところで、人間個人の基本的日常的行動は、集団意識に従うのか、個人の好みに従うのかにも興味があります。もっと言うと、われわれのような個人(企業でない)棚主の行動はどのようになるのか。

個人棚主の目指すところは、「自由に」自分の選書をならべて売れる店をもつことだろうと理解しているのですが、その実現方法は色々ありそうです。PASSAGEという多数の棚のコラボレーションの中で棚を経営するのもよし、青熊書店さんのように一店舗を構えるのも(大変だが)よし。

大切なことは自分の好きな本をできるだけ多く、本と読書を愛する皆に見て貰うことと思います。手段はもっといろいろありそうです。

(2)現在の私の棚主ページです

SOLIDA

RIVE GAUCHE

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また来週。

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