BOOKS HIRO通信 第156号

読書のはかどる夏休み
hiro 2025.07.11
誰でも

(1)みなさまこんばんは

物置部屋を何とか片付けて、最小限のスペースを確保した。邪魔されずにゆっくり読書ができる。エアコンのない部屋なので、この時期は暑いが、閉じこもって、本を読んでいると妙に落ち着く。暑さで余分な感覚が麻痺している。不思議な没入感。

夏の読書といえば思い出す。「夏休みを過ごす祖母の古い家では、天窓と崩れかかった梁のある屋根裏部屋は煮え立つほどのスレート屋根の下にあって、文字通り窯」の中で、『失われた時を求めて』14巻のうち、書棚から唯一持ち去られていなかった「消え去ったアルベルチーヌ」を読みふける若きフランソワーズ・サガンのことを。


(上記引用は『私自身のための優しい回想』(フランソワーズ・サガン 朝吹三吉訳 新潮文庫)の170ページ。)

このあとのページで、サガンは『失われた時を求めて』を初めて読む人に、「消え去ったアルベルチーヌ」から読むことを勧めている。最初の一文が衝撃的だからという。

私も高校から大学の夏休みに実家の応接間で、新潮社の黃色の装丁の世界文学全集で、サガンの『悲しみよこんにちは』やコレットの『青い麦』を読み、トーマスマンの『トニオクレーゲル』、『魔の山』などを読みふけった。その時の部屋の静けさや、暑さ、少しかび臭い空気の質を鮮明に思い出す。そこには読書の持つ「永遠性」を助けるものがあった。これらの本を今でも手に取るたびに、初めて読んだ瞬間の暑い静けさを思い出す。

秋や春ばかりではなく、夏も読書のために良いシーズンなのではないかとつくづく思う。

(2)現在の私の棚主ページです

SOLIDA

RIVE GAUCHE(『青い麦』の原書もありますよ)

***

また来週。

無料で「BOOKS HIRO通信」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
BOOKS HIRO通信 第155号
誰でも
BOOKS HIRO通信 第154号
誰でも
BOOKS HIRO通信 第153号
誰でも
BOOKS HIRO 通信 第152号
誰でも
BOOKS HIRO 通信 第151号
誰でも
BOOKS HIRO 通信 第150号
誰でも
BOOKS HIRO 通信 第149号
誰でも
BOOKS HIRO 通信 第148号