BOOKS HIRO通信 第143号
(1)みなさまこんばんは
先日、青熊書店大岡山店で購入した『藤田嗣治 パリからの恋文』(湯原かの子著 新潮社)を読み終えました。
日本に残した妻に愛情細やかな手紙を書き送っていたフジタ。結局妻がフランスの地を踏むことはありませんでした。最終的には母国日本とも縁を切って(切らされて?)レオナルド・フジタとして亡くなったが、そのことが彼の素晴らしい画業のさらなる発展の妨げにならなかったかは議論のわかれるところ。ともかく自由人としてパリに生きた生涯には学ぶところが多い、と痛切に感じさせる本です。著者の筆は冴えており、フジタの息遣いまで聞こえてきそうです。
この本を読んで思い出しました。途中まで読んでいた『藤村のパリ』(河盛好蔵著 新潮文庫)をこれからまた読み続けます。藤村とフジタの交渉がどちらの本にも書かれています。
(『藤村のパリ』はPASSAGE RIVE GAUCHEの「tsundoku」さんで買ったものです。)
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PASSAGEの書棚「開高健の本棚/開高健記念会」さんから購入した『開高健は何をどう読み血肉としたか』(菊池治男著 河出書房新社)を読み終えました。
開高健は蔵書家でも愛書家でもない、とまえがきに書いてあります。仕事のためしっかり読みたい本はまずカバーを剥ぎ取り帯も一緒に捨てる、傍線や書き込みはほとんどせず、(数)ページの半分を折りこんだりする。著者は残されたその本を手に取り、どの部分が開高健の心をうったのかを推測しようとしています。記念館にも一部が残されている開高健の蔵書は意外に多くはないのだそうですが、それでも、巻末に挙げられた蔵書のリストは圧巻です。そして私の読書欲をそそります。
代表作とも言える『輝ける闇』は最近読み返したのですが、これを書く前に開高健がベトナムで体験したことを知りたくて、電子版となっている『開高 健 電子全集 小説家の一生を決定づけたベトナム戦争 Kindle版』を買おうとして、指が滑って一巻だけでなくて全11巻を買ってしまいました。Kindle本は返品がききません。でも多分、一年ぐらいかけて全部読みそうです。二万ページ以上ありそうです。全集を買うと置き場所に困るのですが、Kindle版なので大丈夫です。全集を持って歩き、電車の中などで読めるというのは贅沢なことです。
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『アンパンマンと日本人』(柳瀬博一著 新潮選書)を著者の棚からではなく「楠木建の本棚」さんから購入しました。これも早速読了。
私はアンパンマン世代ではないのですが、アンパンマン以前のやなせたかしの活躍は知っています。知っているというよりも、やなせたかしとその友人たちのかもしだした時代の空気のなかで育ったといっていいでしょう。たとえば、「手のひらを太陽に」を歌いながら。
やなせたかしは出会った人たちが「困りごと」を解決するのを、アンパンマンのように自分の身を削って助け続けました。そこには商売っ気はほとんどなかったと著者は書いています。「何事も金」の現在の世の中でそれは、古臭いことではなくて、明るい未来を開く大きなカギだろうと私は思います。PASSAGEのコミュニティもこうありたいと思っています。
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あす夜は青熊書店のレセプションにお呼ばれです。楽しみです。
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また来週。
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