BOOKS HIRO通信 第201号
(1)みなさまこんにちは
『急に具合が悪くなる』(宮野真生子・磯野真穂著 晶文社 2019年)をRIVE GAUCHE店のこじかブックスさんから購入してすぐ読んだ。
この本の存在は前から知っていたし、PASSAGE各店舗でもかなり売れているので、気になる存在だった。いざ買おうとすると題材(癌闘病時の生き方)が少し重たいので、二の足を踏んでいた。
視点を変えて、自分の老後を考えるための参考になるだろうと考えて手に入れた。
闘病中の哲学者とその友人の人類学者の往復書簡だけで成り立っている本。一読して、その内容の濃さに圧倒される。自分がこの二人のどちらかの立場であったらこのような真摯な書簡のやりとりができるのかと自問する。にわかにはできそうもない。
私の(老人という)立場から考えてみる。日本人の平均余命から考えると私が生きるであろう年数はあと10年から15年くらい。長いようでも短いようでもある。また、なんらかの病気にかかるリスクもあり、余命がもっと短くなるような事態があるだろうし、突然医者からあとXX年と言われる病気になることもあるだろう。その際に動じずに平然とまたはもっとパワフルに自分の思うままの生活を続けられるか、という問いをこの本は投げつけてくる。
読んでみた結果、当たり前なのだが、ストレートな答えは出ない。やはり、いざとなったらうろたえかつ悩むのだろうと、情けないが思う。考えてみるとこの著者たちも実際には悩み苦しんでいる。なのに、この本を読み終えて、さわやかさや勁さを感じ取れるのは、この本が二人が懸命に書き綴ってやりとりされた書簡で構成されていることに起因すると思った。本を企画した編集者の腕も素晴らしい。
ひとつだけ引用させていただく。
もちろん、そこで感じられる自分とは、偶然の病がもたらした死の恐怖の淵に立っている存在です。病など罹ることなくありえた「にもかかわらずこのようにある」自分の存在が、痛みと死の恐怖のなかに立ちあがってきます。間違いなく怖いです。「ないこともありえた」などではない、無へと引きずり込まれそうになります。その恐怖をはらうように、私は考え、言葉にするのです。そうやってなんとか生の側に踏みとどまります。痛みと死において自分を取り返し、その自分に立ち止まるために語りを紡ぎ出す。
この本のポイントは「稀有な友情(オープンな人間関係)」と「書くこと」だと思う。悩み苦しむことをまともに捉えて正直にそれを書き綴る。それを読んで、相手の痛みを自分の痛みとして捉えて直言してくれる友人がいることは非常な強みとなる。
なにかについて「書く」ことは、自分の気持の整理になりまた思考を積極的な方向に発展させる。生きるためにとても役立つこともわかる。自分を失いそうな場合に、ぐっとこらえて「書くこと」が力となる。
私は年を気にせず読み続け、読みながら考えたことを書き続けたい。読みながらあるいは生きながら書き、考え、また書くというサイクルを死ぬ日まで続けたい。
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また来週。
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