BOOKS HIRO通信第10号
(1)みなさまこんばんは。
今週売れたのは以下の1冊です。
①『若き日と文学と 対談 北杜夫・辻邦生』(中公文庫)
入荷した日の夕方、新装なったPASSAGE by ALL REVIEWSサイトの「新入荷本」のページを使って、Twitterで紹介したらすぐに売れました。新サイトのおかげです。
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以下は週刊ALL REVIEWS Vol.167 に私が書いた巻頭言の文面です。
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牟田都子さんのご著書『文にあたる』(亜紀書房)を発売とほぼ同時に購入し、すぐに読み始めた。内容への期待度からするとすぐに読み終えるだろうと思っていたが、思った以上に読み応えがあり1週間ほどかけて最後まで熟読した。
私のこれまでの「校正」への考えは狭く浅かった。実際に牟田都子さんがやっておられるのは、校正と校閲を含み、本文だけでなく挿入された図や表紙や帯などの要素にも及ぶ。参考資料も大量に、時には著者や編集者の考えた範囲を超え渉猟するが、膨大な作業を締め切りに間に合わせる。これは私から見るとまさに神業だ。
あるブックフェアで一度だけお会いした牟田都子さんは控えめで優しげであり、とてもそんな神業を日常おこなっている方には見えなかった。その、いい意味でのギャップに、驚いている。
私事にわたるが、私の「校正」との関わりは、4年前にさかのぼる。2018年に書評サイトALL REVIEWSに掲載する書評文の校正者が公募された。それに応募して幸いに採用されたのがきっかけだ。見様見真似で校正を行い、書評を求めて国会図書館に通ったのがいまや懐かしく思い出される。その後、ALL REVIEWS友の会にも入会し、今年は共同書店PASSAGEの立ち上げにも棚主兼店頭スタッフとして参加することができた。4年前はごく普通の孤独な読書好き偏屈老人だったのが、最近は多くの読書好きの方たちとフランクに楽しくお話出来るようになり、自分でも驚いている。
4年前に私が参加したのはある意味で単純な校正作業で、元の雑誌記事やWeb記事の文面とその記事をOCRでデジタル化したものを突き合わせる作業だった。したがって、OCR作業で生じる「ノイズ」を除去するのが主な作業だけであった。ごくまれに元の記事自体の文面に存在する明らかな間違いを他の資料を参照し仲間と相談して修正することもあった。
私はこのときうかつにも、公刊されている文章はすべて誰かが校正・校閲していると信じていた。今回牟田都子さんの『文にあたる』を読んでみて最初に驚いたのは、実はすべてではないと言うことだった。実際の書籍などの刊行には複雑な事情があり、やむを得ないこともあるらしい。
この本を読んで最も感銘を受けたのは、シジフォスの神話のように大変な校正・校閲者の作業とそれに対する努力である。献身的とも言える作業に対する物心両面の対価はあまりにも少ない。なにが、その努力への原動力なのだろうか。本当のところはこの本を読んで考えてもわからない。すぐにはわからないのが当たり前だとも思える。牟田都子さんも「うまいひとことが思いつかない。だからこの本を書きました。」と「はじめに」でおっしゃっている。
私がいま考えつく限りでは、読書という行為や読者へのかぎりない愛情・共感が原動力だろうと思う。この本は座右に置くつもりなので、今後違うことも思いつくだろう。(hiro)
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(2)今週入荷済み本は上記の通りです。
①『若き日と文学と 対談 北杜夫・辻邦生』(中公文庫)
売れてしまいました。すみません。
(3)来週入荷予定本は1冊です。
①『チベット滞在記』(多田等観著 白水社)
一時、ラサに行って僧院で暮らしたくなったのは、この本の迫力のせいです。
(4)在庫目録(9月9日11時現在)です。
(5)オンライン販売のご案内です。
ではまた来週。
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