BOOKS HIRO通信 第138号
(1)みなさまこんばんは
『評伝 開高健』(小玉武著 ちくま文庫)を少し前にSOLIDAで買いました。著者の小玉武さんが棚主をなさっている棚からです。
積読本だったのを、今週やっと手に取り、読み始めてすぐびっくり。32ページに開高健の蔵書に森有正の『流れのほとりにて』や『城門のかたわらにて』があり、開高健は疲れを感じると旧約聖書とともに森有正を繙いていたとの記述があったからです。些細なことでも自分との共通点があると、その人にのめり込むのは読者の常。そのあとは、バイトの行き帰りの車中の時間などをみつけて、読みふけりました。
米軍の撒いた枯葉剤の下で、従軍記者として死線をさまよいながら、『輝ける闇』のもととなる戦場ルポを書いている開高健のすがたが印象深いところです。あらわには著者は書いていませんが、この経験は後年の早すぎる開高健の死を招いたと思われます。
最後に近く、チャップリンの映画的手法や作劇術を開高健が学んだと書かれており、それには全面的に合意します。その数行先にイタリア語では道化師のことを「アレッキーノ」と言うとの文がありました。最近観たTVドラマの秀作「東京サラダ」の副主人公の元刑事有木野が、主人公から「アリキーノ」と親しみをこめて呼ばれていたのですがこれにちがいないと、ひとり微苦笑を噛み潰しました。
この本の記述に導かれて、今まで読んでいなかった開高健の中編「屋根裏の独白」を新たに読みました。ヒトラーのウィーン時代を描き、彼が大衆扇動のコツをつかむ様子が、「本当の」ように描かれます。開高健さんは講談師のように語り上手です。
小玉武さんの棚からは次は『『洋酒天国』とその時代』を購入してみたいと思います。また、ご搬入のとき開高健さんの思い出話も伺いたいと夢見ています。
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ところで、通勤の途上でSOLIDAのご近所さんである一誠堂書店のワゴンで『植草甚一日記』(植草甚一スクラップブック第39巻 晶文社)を購入しました。同じ本はPASSAGE開店直後に、私の棚に置きましたが、すぐに売れてしまいました。また読んでみたいと買い直しました。古本でしたが私の売ったものではないようです。
鶴見俊輔の解説が秀逸です。ズバリと私がなぜ植草甚一特にその日記類が好きか、その理由を解き明かしてくれました。日記・エッセイは大切であることがよく分かる名解説です。
解説から、一節を拝借。
いっぽうは軍国主義下の日記、いっぽうは高度成長化の日記なのだが、どちらでも、植草甚一は、自分の好みにそって散歩し、その途中で本を買い、買った本にはすぐにパラパラと目をとおし、うたたねをしては、また本を読む。
これを大量の原稿を書きながら続けているわけですが、原稿の締切に追われる部分がなければ、理想的なそして天国にいるような生活です。私は20代後半から(植草甚一を読み)こんな生活を夢見ていました。70歳を超える頃からやっとこの境地に近づいたような気がしています。とても幸せです。
(2)現在の私の棚主ページです
SOLIDA
RIVE GAUCHE
来週の予定。
日曜日(SOLIDA)、火曜日(SOLIDA)、水曜日(PASSAGE)、金曜日(RIVE GAUCHE)でバイトスタッフ勤務です。
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