BOOKS HIRO通信 第132号
(1)みなさまこんばんは
佐藤亜紀さんの『歴史小説の技法』講座の前にと思って、『小説のストラテジー』と『小説のタクティクス』は先週までに読み終えました。今週は小説、『バルタザールの遍歴』と『天使』を読みました。
「バルタザール」は1906年生まれの貴族の主人公(の一人)の名前、『天使』のほうの主人公も20世紀はじめに生まれています。どちらもウィーンが主要な舞台となっており、ナチスドイツの台頭やオーストリアへの侵攻が背景となっています。主人公が特異な能力を持って活躍するのも共通してます。
以下は、私だけの感想です。『バルタザールの遍歴』の最後で新天地ブエノスアイレスに行こうという主人公(たち)の会話を読むと、尊敬するトーマス・マンが書いたなかで最も好きな小説『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』での南米への船出を思い出して嬉しくなりました。
次に何を読もうかと佐藤亜紀さんの小説を物色中です。まだ読んでいないものがたくさんありすぎてまた嬉しくなるのですが、1975年頃の架空の日本(新潟)が舞台の『戦争の法』と、『天使』に関連した小説であるらしい『雲雀』にする予定です。手に入る限りのものを全部読むまでは「佐藤亜紀熱」は冷めないでしょう。
なお、ALL REVIEWSサイトには佐藤亜紀さんの『歴史小説の技法』講座の案内が掲載されています。
PASSAGEにある「Tamanoir」の書棚ページはこちら。
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今朝は片岡義男さんの「五月最後の金曜日」という作品を読みました。
(「片岡義男ドットコム 片岡義男 全著作電子化計画」というサイトに行くと、月500円の会費で電子化されているすべての作品を読むことができます。ユーザーインターフェースがしっかりしているサイトで、面白そうな作品を時々ピックアップして読むというスタイルが気に入っています。)
「五月最後の金曜日」の中ほどに、読書好きのダンサーが仕事を変えて、神保町すずらん通り(!)で古書店をはじめたという物語が書いてあります。古書店主は自分の読んだ数多くの本をジャンル別にはせず、自宅の棚での配置そのままに並べます。必然的に、客は何度も通って本を探し、そのたびに新しい魅力的な本と出会うのを楽しみにすることになりましたとのこと。
三年目を迎えるPASSAGE各店舗の棚の様子とそこに来るお客様の楽しみ方に通じるところがあると思いました。店主は自分の好きな本を自由に並べ、客は自分の知らなかった本を思いがけず発見するという楽しみです。嬉しそうに本を購入する客の姿を見て古書店主も楽しむという、私の考える書店の本来の姿がここに活写されています。
片岡義男さんは他にも、神保町の書店や喫茶店、出版社が登場する作品をいくつも書いています。それとの偶然の出会いを楽しむのも乙なものです。
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SOLIDA
RIVE GAUCHE
来週の予定。日曜日と火曜日、金曜日すべてRIVE GAUCHEで勤務です。
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